Farnsworth House 1950
ファンズワース邸
Piano,Illinois,USA
Ludwig Mies van der Rohe (1886-1969)
ファンズワース邸は、イリノイ州の医師、エディス・ファンズワース博士の別荘として建てられた。ミースにとっては、ナチスの台頭を避けて亡命したアメリカにおいて唯一手掛けた独立住宅であり、同時にそのモダニズム住宅の頂点とも言える代表作となった。
水平面の床と屋根スラブは、それぞれに横付けされた8本のH鋼で支えられ、それらをつなぐ垂直面は、サッシュの方立とガラスのみが室内外を隔てている。敷地がフォックス・リバーの川原沿いであったため、過去100年間の水位記録に基づいて、床が地表から1.5mの高さに持ち上げられていたにもかかわらず、この住宅は何度か洪水を経験し、近年では2008年にもハリケーンIKEの影響で水没の被害に遭っている。
また、施工時にミースが完璧な精度を求めたために、膨れ上がった工費をめぐって施主との間で裁判となったことでも有名だが、ファンズワース女医は、それ以外にも雨漏りや大量の結露に悩まされていたという。それでも、この小さな川原の住宅は、ミースが生涯にわたり追求した無柱のユニバーサル・スペースの原点として、20世紀後半の世界の建築に大きな影響を与えていくことになる。
[Photo from flickr(by suttonhoo)]